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中小企業診断士の勉強法とその他諸々

【直前期必見】2016年度版中小企業白書のエッセンスをまとめてみる~第2部編④~

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いよいよ中小企業診断士試験まであと一週間ですね。

最後の一週間は暗記モノの勉強に費やす人も多いのではないでしょうか。

僕も来週は中小企業経営・政策、経営法務、その他の科目に関しても法律やガイドライン等を中心に最後の追い込みをかける予定です。

それでは今回は2016年度中小企業白書第2部第5章をまとめてみます。

第2部第5章 中小企業の成長を支える金融

企業規模別にみた資金調達構造の変遷

企業規模別に見た借入金の推移

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出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

金融機関の貸出は90年代から00年代中盤にかけて減少し、大企業に関してはリーマンショック後急激に増加しているが、中小企業に関してはリーマンショック後も減少を続け、最近はやや増加しているものの00年代半ばの水準が続いている。

 

借入金依存度

製造業・非製造業、大企業・中小企業に関わらず借入金依存度は低下傾向。

また、製造業・非製造業ともに大企業よりも中小企業のほうが依存度が高い。

 

借入金月商倍率

借入金月商倍率は製造業では中小企業のほうが高いが、非製造業では大企業のほうが高い。

中小企業製造業を除き倍率は低下傾向にあり、借入金の負担は軽減されてはきている。中小企業製造業では金融機関からの借り入れが減少した分を金融機関以外からの借入で補っており、負担は軽減されていない。

(*私見ー非製造業は規模の経済が働きづらいのも影響しているのではないでしょうか。)

 

企業の借入金の需要の背景

資金の推移の背景には①「設備投資や関係会社への投資」②運転資金の需要の背景となる「企業間信用」の変化が考えられる。

 

①「設備投資や関係会社への投資」

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出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

大企業、中小企業ともにリーマンショック後、設備投資が激減し、現在でもリーマンショック前の水準まで回復していない。最近は大企業の設備投資が横ばいとなる中、中小企業が増加しており、大企業の水準を上回っている。

子会社や関連会社への投資について見ていく。

国内関連会社への投資、海外関連会社への投資は中小企業、大企業ともに増加傾向にある。海外に関しては2005年以降大企業が大きく投資を増やし、中小企業との差が大きくなっている。

 

②「企業間信用」

企業間信用とは企業間でのいわゆる「掛取引」のこと。

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出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

売上債権月商倍率、仕入債務月商倍率共に縮小傾向にあり、企業間信用が縮小しており、特に製造業における売上債権月商倍率の縮小が大きい。また、仕入債務月商倍率は、中小企業と大企業の差が開いていることがいえる。

 

売上債権月商倍率と仕入債務月商倍率の差(サイトギャップ)棚卸資産月商倍率を加えた「運転資金月商倍率」はかつては大企業のほうが高かったが製造業では2002年に逆転し、現在でも中小企業が上回ったままとなっている。

よって、中小企業製造業のほうが相対的に運転資金の負担が重くなっていると言える。

 

企業規模別にみた金融機関の貸し出し状況(上記第2-5-2図)の要因

①中小企業においては内部留保の範囲内で設備投資を実行し、大きく借り入れは伸びなかった。

②大企業は海外を中心とした関連会社への投資を積極的に行い、その金額が直接金融や内部留保の増加額以上になったため、金融機関の借り入れを増やしたと思われる。

 

借入金の増減別にみた企業収益の推移

大企業、中小企業とも借入金を増やした企業よりも、減少させた企業の割合が相当程度上回っている。

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出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

借入金を増やした企業と減らした企業で収益性(経常利益率)を比較すると、企業規模を問わず、減らした企業のほうが収益性が高い。

収益性の差は大企業よりも中小企業において大きくなっている。

 

無借金企業と借入条件変更企業の推移

高収益企業は内部留保が潤沢となり借入金の返済を進めて無借金となるのに対し、低収益企業は借入金の返済が進まず、負債比率が高まっている。

無借金企業の増加

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出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

大企業・中小企業ともに「無借金企業」は増加傾向にあり、大企業においては2014年時点では約4割の企業が「無借金企業」となっている。

無借金企業を業種別に見ると「建設業」「製造業」「卸売、小売業」は比較的少なく、「情報通信業」「不動産業、物品賃貸業」「学術研究、専門技術サービス業」は割合が高くなっている。

 

借入条件変更企業の推移

中小企業から金融機関への借入条件の変更申込はリーマンショック後増加したが(70万件程度)、足元では景気拡大もありやや減少している(50万件程度)。

金融円滑化法の効果もあり9割以上の申込みが実行されている。

再生支援協議会の利用状況

借入条件変更企業等の金融支援を必要としている中小企業を支援するために設立された「再生支援協議会」に相談を実施した企業を業種別に見ると「製造業」「卸売業、小売業」「建設業」の合計が72.3%となっている。

 日本の産業大分類別に見た企業の割合と比較すると「製造業」の相談割合が非常に高い。

再生計画完了案件の金融手法を見ると「金融機関による条件変更(リスケジュール)」が95%近くを占めている。

 

開業率・廃業率の動向

「製造業」「建設業」は開廃業率ともに平均から大きく乖離しており、新陳代謝が停滞している。

また「卸売業・小売業」の廃業率は全業種平均と比べ低いものの、開業率は全業種平均を下回っており、市場が縮小していると推察される。

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出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

上記の再生支援協議会に相談を実施している業種も「製造業」「建設業」「卸売業・小売業」が多く、これらの業種は暫定的な金融支援だけでは再生は困難で、抜本的な再生支援が必要ではないかとされている。

 

信用保証制度の利用動向

信用保証制度の利用者はピークの99年には222万者が利用していたが、その後は緩やかに減少を続け、14年度は141万者となっている。

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信用保証の残高も2000年以降減少。リーマンショックで増加に転じたが足元では減少を続け、14年度の残高は27.7兆円となっている。

出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

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出典:『2016年度中小企業白書』第2部第5章 中小企業の成長を支える金融より

信用保証利用者の傾向

借入を「信用保証を利用した借入のみ」「金融機関のプロパー融資のみ」「両方を併用」の3つに分類すると、90年代までは「両方を併用」する企業が半数を占めていた。

90年代末の金融システム不安やリーマンショックを経て、現在では「信用保証を利用した借入のみ」を行う企業と「金融機関のプロパー融資のみ」の企業がそれぞれ上昇しており、二極化が進んでいる。

 

【参考】信用保証制度

www.zenshinhoren.or.jp

今回のまとめ

企業の借入金を見ると、大企業は海外関連会社等への投資を増やす中で金融機関からの借り入れを増やしているのに対し、中小企業では内部留保の範囲内での投資に留まっており金融機関からの借り入れは横ばいになっている。

収益力と借入状況を見ると、高収益企業は借入金を返済し無借金企業となっている中で低収益企業は支払条件を変更するなど資金繰りに窮している状況も確認できる。